キレート剤の研究開発

1つ以上ドナー原子を同一の金属イオンに結合させるようなリガンドは、キレートリガンドあるいはキレート剤と呼ばれます。キレート剤またはそれらの錯体は、汚染除去試薬、MRIの造影剤、放射性医薬品、発光プローブ、生体内におけるNMRシフト試薬として、応用されています。

溶液中の金属イオンは、金属イオンがリガンドに取り囲まれた錯体を形成します。2つ以上の等価な結合により環状構造を形成して金属イオンに結合するリガンドを、キレート試薬またはキレート剤と呼びます。キレート剤と金属イオンの複数の結合は、単結合に比べて錯体を安定化する効果を持ちます(キレート効果)。有機キレート試薬は実用的に非常に重要です。 化学汚染除去試薬:キレート試薬は、毒性あるいは放射活性のある金属汚染物を取り除くために用いられます。Ethylenediaminetetraacetic acid(EDTA)、ピコリン酸、シュウ酸、クエン酸、diethlenetriaminepentaacetic acid(DTPA)などが、キレート試薬として汎用されます。 Decorporation試薬:decorporation治療は、キレート試薬を用いて生体内から毒性あるいは放射活性のある金属イオンを除去する治療法です。この方法は、体内を放射性核種に汚染された人に対する投与量を少なくするために効果的な方法です。この目的で最もよく用いられているリガンドは、diethylenetriamine pentaacetic acid(DTPA)です。また、重金属イオンやプルトニウム(Pu)などのtransuraniumイオンを放出させるのに有効です。Cryptand由来のリガンドなど他の錯体試薬も有望視されており、現在開発中です。 生物学的システムでのキレート剤:ポルフィリン由来のキレート剤は、酸素の運搬や光合成に重要な役割を果たしており、また酵素の活性中心としても働きます。 MRI造影剤:1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid(DOTA)とDTPAおよびそれらの誘導体は、MRIにおけるキレート試薬として応用されています。これらのリガンドのGd(III)(ガドリニウム)錯体は、MRIのコントラストを増強し、臓器の機能や血流を可視化するために投与されます。MRIに用いるより効率的なキレート試薬のデザインと合成が期待されています。現在、生体内でより特異的な分布をする造影剤、生化学的な刺激に応答する造影剤、生物的な現象を細胞レベルで可視化できる造影剤の開発に研究の焦点が置かれています。

キレート試薬の放射性医薬品への応用。放射性医薬品は放射活性のある薬物であり、診断および治療に用いられ、少量の放射能を体内の特定の部位に到達させることができます。放射性医薬品は、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチド模倣化合物、低分子量有機化合物などの標的ベクターを用いて特定の受容体に標的することが可能です。多くの金属元素に医学的に利用可能な放射性同位体があるため、金属放射性医薬品は核医学において重要な役割を果たしています。標的させる金属放射性医薬品は、放射活性のある金属イオンを標的分子に双機能性リガンドによって結合することで形成されます。DTPA由来の双機能性リガンドは一般的に診断目的に用いられています。DOTAの金属錯体は熱力学的および動力学的に非常に安定であるため、DOTA由来の双機能性リガンドは治療目的に多く用いられます。よりよい薬物動態的な安定性を有する錯体を形成するような双機能性リガンドが、現在開発中です。

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