NMR(核磁気共鳴)シフト試薬

常磁性シフト試薬は化学シフトを誘引する能力を有し、複雑なNMRスペクトルを単純化する効果があります。最も効果的なシフト試薬は常磁性ランタノイドイオンの錯体であり、ユーロピウム(III)はダウンフィールドシフトに、プラセオジム(III)はアップフィールドシフトに用いられます。

現在までの数十年間において、核磁気共鳴分光学は有機化合物、生体有機化合物、有機金属化合物の構造を解析する方法として重要なものとなってきました。例えば、化学シフトとカップリングのパターンは、立体構造の決定にあたって重要な情報を与えてくれます。有機分子は主に炭素と水素を有するため、構造的な情報のほとんどはプロトンと炭素のNMRデータから得られます。しかし、プロトンNMRのシグナルは広範囲には分布しない(0から15 ppm)ため、複雑な有機化合物あるいは生体分子のプロトンNMRスペクトルは解析が困難な特徴のないクラスターとなってしまうことがあります。常磁性遷移金属イオンは配位しているリガンドのプロトンNMRスペクトルに摂動を起こさせることが知られています。この現象に基づいて、化学シフトを引き起こし、複雑なNMRスペクトルを単純化する常磁性NMRシフト試薬が多く合成されています。理論的な研究から、誘起された化学シフトは、常磁性イオンと有機分子の接触あるいは双極性相互作用(偽接触)の結果であることが明らかとなっています。有効なシフト試薬の条件として、最小の幅広化(line broadening)効果で最適なシフトを誘起する能力を有すること、様々な有機分子と結合できること、などが挙げられます。最も効果的なシフト試薬は常磁性ランタノイドイオンの錯体であり、ユーロピウム(III)はダウンフィールドシフトに、プラセオジム(III)はアップフィールドシフトに用いられます。汎用されているリガンドとして、dipivaloyl methane (DPM)、2,2,6,6-tetramethyl-3,5-heptanedione (THD)、1,1,1,2,2,3,3-heptafluoro-7,7-dimethyl-4,6-octanedione (FOD)があります。シグナルの重複は蛋白質の三次元構造の決定にあたって問題となります。常磁性の三価のランタノイド元素の塩とDOTPの錯体は、ある種の蛋白質のNMRスペクトルにおいてシグナルの重複を解決する目的に使用されています。

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